【エジプト・エチオピア出張シリーズ③】 若き起業家達と歩む~「中東スタートアップの父」アハメド・エル・アルフィ氏の想い~

2019.12.27

今回訪問したRise-up Summitをはじめスタートアップにおいての動きが大きくなる昨今、それを語るには欠かせない人物がいる。

中東スタートアップの父とも言われるアハメド・エル・アルフィ(Ahmed El Alfi)氏である。

なぜ彼が若き起業家達の支援をするようになったのか。

彼は、エジプトで生まれ幼少期よりアメリカで過ごし、25年間ベンチャーキャピタル企業で活躍してきた。その後2006年エジプトに戻ったときに同国で有能な若者達がいるのに活躍の場がないという現実を目の当たりにした。同時に疑問を覚え、現状を変えなければいけないと思ったことがきっかけであった。

若き起業家達の支援と育成の必要性を感じた彼は、2011年にはアクセラレーター「Flat6Labs」(https://www.flat6labscairo.com/)を、そして2013年に現在ではエジプトにおけるスタートアップの中心的存在ともいえるインキュベーション施設「The GrEEK Campus」(https://thegreekcampus.com/)を設立。

「Flat6Labs」では年に2回シード・アーリーステージのスタートアップ企業を公募し、選ばれた8~10社に1万~1万5千ドルの資金支援、コワーキングスペースの提供、アメリカやMENAで活躍するメンターによる指導をはじめとしたビジネストレーニングを実施している。

「The GrEEK Campus」では企業アドバイス、コワーキングスペースやオフィススペースの提供をしており、アクセラレーター、法律事務所などに加え、Uberなどグローバル企業など、これまで140社以上のスタートアップ関連企業が入居した。

その後、2012年より中東・北アフリカ最大規模のスタートアップイベントである「Rise-up Summit」(https://riseupsummit.com/programs)を開催するようになった。

同時期より、国の経済発展には子ども達への教育が不可欠であると考え始めるようになった。その背景としては、エジプトやアフリカ諸国では貧困により十分な教育を受けることのできない子ども達が大勢いるということ、そして優秀であったとしても教育が受けられず、優秀な人材はどんどん海外に流れ、その結果国の経済発展に結びつかないという現状があった。

その問題を打開すべく、インターネットを利用した無料オンラインビデオ教育プラットフォーム「Nafham」(https://www.nafham.com/)の設立に至った。内容は初等教育や中東教育の教科書をもとに作成されており、使用媒体はFacebook、YouTube、自社サイトが中心となっている。

現在一日当たり110,000以上のビデオレッスンを提供しており、視聴者数は75万人を超え月100万回視聴されているアラビア語圏最大の教育プラットフォームにまで成長した。

現在、教養を身につけたり、専門的な学習のできる有料コンテンツなど、大人向けの教育プラットフォームも充実させ、Nafhamを利用した子ども達が大人になってからも引き続き学習することが出来る仕組みづくりに取り組んでいる。

アハメド・エル・アルフィ氏の、起業を目指す若者達をあらゆる面から支援をするという一貫した取り組みが、現在のエジプトや中東のスタートアップの礎となっていることは間違いない。

そして一人でも多くの子ども達や若者達が必要な教育を受け、起業し、大きく羽ばたいていって欲しいという彼の思いは、現在活躍している起業家へ、そして未来の起業家達にも引き継がれていくことだろう。