【ケニア/ウガンダ出張シリーズ①】

『アフリカにおけるスタートアップの実態と現状を探る~ケップル山脇さんにインタビュー~』


この度E-gatesでは、「読者の方にアフリカビジネスの現場をもっと知ってもらいたい」という想いから、東アフリカの第一線でご活躍されている方々にインタビューを実施しました。分野は農業から外食、モビリティまで、内容はアフリカの潮流から人事まで幅広く取り扱っております。第6回にわたるシリーズ編でお送りいたしますので、ぜひご一読ください!


「世界に新たな産業を」をモットーに、アフリカにおいて現地スタートアップの成長をサポートし、日本企業と協業する仕組みを作り出す株式会社ケップル。


第一回目は、ケニアを拠点とし、ケップルの東アフリカ事業を統括する山脇さんに、アフリカにおけるスタートアップの実態と現状をお伺いしました。


―本日はよろしくお願い致します。ケニアで投資をしている山脇さんの目線から、ケニアとアフリカ最大GDP国でありアフリカビジネスでは外せない国ナイジェリアのスタートアップの違いについて教えていただけますでしょうか。


大きな違いは、ケニアは外国人経営者が比較的多いことで外国人と現地人経営者が半々くらいです。ナイジェリアは現地人経営者が大半です。


理由の一つとしては、ケニアは比較的過ごしやすい気候など、住みやすいことが挙げられます。


もう一つは、欧米の有名大学に留学するのがケニアではあまり一般的ではないことです。起業家の特徴・要件として、超高学歴・エリート、貯蓄がある、出資を受けるコネクションがある、高度に対応できるスキルや経験があることが挙げられますが、ケニアの現地の大学でそれらのスキルを十分に得ることは難しく、起業に対するハードルがまだ高いと言えます。


一方で、ナイジェリアは気候や社会インフラの不足(電力が常にひっ迫している)から外国人にとって住みにくい側面があります。


加えて、ディアスポラなど、高学歴の人が多いです。ナイジェリアは貧富の差が大きく、富豪は莫大な資産を持っているため、海外の大学に行くことができるのです。将来の国を担うべき人材であるにも関わらず、大学卒業後、現地企業に戻らない人が多いのですが、起業であれば自分の本当にやりたいことができるから帰ってこようという潮流が高まり、2013年~ナイジェリアではスタートアップの波が来ています。 


―住みやすさと教育レベルが、ケニアとナイジェリアのスタートアップに大きな違いを生み出しているのですね。


―実際に投資を決める際に、ポイントとなる点はどこでしょうか。


私が重要視していることは如何に現地のニーズに沿ったサービスを提供しているかです。


スタートアップを経営していくには様々な考え方や手法がありますが、その一つにリーン・スタートアップと言われるものがあります。リーン・スタートアップとは、事業を作る前に仮説を立て、細かい検証を何度も行い、ユーザーのニーズを的確にとらえることを重要視する手法で、逆に言えば性急に製品を開発しないので、「リーン」(引き締まった)な手法なわけです。


Airbnbが良い例です。システム自体は特段難しいものではありませんが、顧客ニーズを的確に捉えたがために大ヒットしました。スタートアップにおいて、高度なものを作るよりもニーズを理解することのほうが大事なのです。


―ニーズを的確に理解するというのは、一見簡単そうで実は非常に難しいと思います。我々も日系企業へ向けてコンサルティング業務を行っていますが、日本人のニーズ予測と実際のニーズにギャップを感じることがあります。仮説を立てて、検証するために実際の市場である現地で泥臭く手を動かし、情報収集することが非常に重要ですね。


―山脇さんが現在注目している分野についてお話いただけますでしょうか。


注目分野は4つあります。


「モビリティ」「ヘルスケア」「フィンテック」「アグリカルチャー」です。


モビリティ分野のロジスティクスにおいては、道路の未整備や中間業者が多いために、効率性が非常に低いです。スタートアップの力によってどこまで効率的にモノや人を運べるようになるのか、今後に注目です。


また、Maas(Mobility as a service)はアフリカではまだまだ発展していません。現在の兆候として、コンシューマー向け、BtoB向け(Sendy)など細分化されてサービス提供がなされていますが、これらが統合されていくのか、そちらの動向も気にしています。


ヘルスケア分野においては、ヘルスケアに使われるお金は人口と一人当たりGDPによって決定されます。今後、アフリカの人口はどんどん増加し、一人当たりGDPも劇的に増加することを考えると、数十年でものすごい市場拡大が見込まれる、ポテンシャルのある分野です。


実際にケニアでは、医者一人当たりの患者数は日本の50倍で、供給が全く追いついていません。その解決策として様々なスタートアップがでてきています。


例えば救急車。ナイロビには300台ほどの救急車がありますが、全く効率的に回っていません。救急車が来るまでの平均所要時間は3時間ともいわれています。あるスタートアップは、各救急車にGPSを付けてダッシュボードで救急車の位置を把握し、患者から電話をもらうと救急車・病院に電話し、効率的に救急搬送ができるというシステムを構築しました。


もう一つの例は検査。患者の治療には薬を素早く提供することが重要で、そのためには素早い診断、つまりは素早い検査が必要です。良質かつスピーディーに検査を実行し、結果を出す必要があるのです。


しかし、地方のクリニックでは、採血したものをナイロビまで送る必要がありました。


そこで、あるスタートアップは、電子化・小型化した検査機器を買い上げて地方のクリニックに貸し付けを行っています。クリニックは一回使用するたびに検査費を一部を納めるのですが、機器を導入することで診療の質が上がり、診療の質が上がれば、患者が増え医師の収入も増え、相乗効果が発生します。


アグリカルチャーも注目分野です。ケニアでは、国民の60%が農民であるため、彼らの生活水準を上げないと国全体は良くなりません。つまり、農業の生産性を上げることは国へのインパクトが非常に大きいのです。


―ありがとうございます。様々な分野で様々な課題があるからこそ、ビジネスのしがいがあると感じたのですが、アフリカにおける全体的な課題は何だとお考えでしょうか。


インフラ不足と非効率性だと思います。そして、このインフラ不足は今後、日本でも起こってくるでしょう。地方の過疎化が深刻になり、インフラを保てなくなってきます。そうなると、現在インフラ不足で苦しむ途上国が開発したシステムを、将来日本が逆輸入することになるかもしれません。


―日本が先進国である、また、先進国が途上国に技術提供するという時代は終わりが近づいてきているのかもしれません。


―そんな日々発展を遂げているアフリカでお仕事をされている山脇さんですが、アフリカで仕事をするうえで必要だと思うスキルは何でしょうか。


アフリカではロジカルに考えても上手くいかないことばかりです。なので、「壁しかなくても無理して進み続けられる力」が大切だなと感じています。ロジカルに考えることも大切ですが、それが上手くいかなかったときに、それを乗り越えるための体力と気力が非常に大切です。


―それは同感です。本日は貴重なお時間ありがとうございました!


アフリカスタートアップへの投資のために実際に現地に駐在され、投資先の会社が現地でサービス展開するために必要な、細かい顧客ニーズをしっかりと見極めている山脇さん。遠隔の投資ではわからない現地スタートアップの困難を、一緒に知恵を絞って進み続けてくれる投資家さんだと感じました。