この度E-gatesでは、「読者の方にアフリカビジネスの現場をもっと知ってもらいたい」という想いから、東アフリカの第一線でご活躍されている方々にインタビューを実施しました。分野は農業から外食、モビリティまで、内容はアフリカの潮流から人事まで幅広く取り扱っております。第6回にわたるシリーズ編でお送りいたしますので、ぜひご一読ください!
ラストの第6回目は、ウガンダにおいて、ラストマイルデリバリーサービスを提供するスタートアップ企業CourieMateを経営する伊藤さん。
通常の宅配便からオンラインショッピングとの提携、スーパーと提携した買物代行などの日々の様々なサービスに加え、「買い手と売り手が結びつく新しい形の買い物スタイル」をアフリカ・ウガンダから発信することを目指し、新規事業として、ウガンダの人々の生活を支えるキオスク(日本のコンビニエンスストアのような日用品や食料品が購入できる個人商店)などと連携し、新しい形の持続可能性の高い流通エコシステムの起ち上げに奮闘されています。
―伊藤さん、本日はよろしくお願い致します。ウガンダで6年ほど会社を経営されている伊藤さんですが、お仕事をするうえで気を付けていることは何でしょうか。
気を付けていることは「文化への先入観を持たないこと」です。日本人だからこう、ウガンダ人だからこう、という決めつけをするのではなく、個々人と向き合うようにしています。日本人とウガンダ人で区別するのは簡単です。しかし、その先には何も生まれてこず、根本的な問題の解決にはならないからです。
例えば、日本人の中でも様々な違いがあります
子供の頃は学校に児童養護施設から通う同級生や暴走族に入っている子などがいる地域に住んでいました。しかし、東京の大学に進学し、社会人になってアクセンチュアに就職すると、いわゆる”エリート”と言われる家庭で育った同級生や同期と関わることが増えました。日本の中でも本当はみなそれぞれ異なるバックグラウンドを持っています。増して、ウガンダ人と日本人では生きてきたバックグラウンドに大きな差があります。その差を理解するのは容易ではありません。とはいえ、文化の違いとして片付けてしまう事も解決になりません。
文化への先入観でその人をわかった気になるのではなく、その人の生きてきた価値観、暮らしている環境の価値観、現在の生活実態などから、その人がどう考え、なぜその行動をとったのか、深く考えるようにする事で、暗黙知であるバックグラウンドの違いに目を向けようと意識づけしています。
―文化への先入観を持たないこと。すごく響きました。私自身、ローカルスタッフと接する中で、「ルワンダ人は時間を守らない。」「ルワンダ人は自分の考えをあまり口に出さない。」など、ルワンダ人だからこうと決めつけてしまうことがあります。そうすれば、上手くいかなかった時のダメージも少ないからです。しかし、実際に自分が日本人だからあなたはこうでしょと決めつけられたら、すごく嫌な気分になると思います。バックグラウンドの違いに目を向けること。今後意識していきたいです。
バックグラウンドの違いだなと感じた事の一つが、従業員からの給与の前借り申請です。
通常給与の前借りなどは、『貯蓄の習慣がない』『お金の計画性がない』と考えられています。そのため援助機関などは、Family Planningの研修をするなど、貯蓄や計画性を身に着ける啓蒙活動を実施します。
しかし、本当に貯蓄習慣や計画性の欠如から前借りをしているのでしょうか。
注意深くスタッフを見ていると、違う一面が見えてきました。ウガンダは、家族間の繋がりが強く、また失業率も高い事から、養育費、医療費、冠婚葬祭の費用など、急な出費が必要となると、家族の中でお金を持っている人(つまり会社で働き安定収入のある人)にお金を借りようとする傾向があります。現代の日本社会とは異なり、家族の血の繋がりは絶対であり、彼らの価値観ではそれを断わるという選択肢はありません。
せっかく自分の将来のために貯蓄をしていても、事あるごとに家族からのお金の要求があり、手元にお金を持っていても貯める事が出来ません。自分の為に使う事ができません。
手元にあるから使われてしまう。のであれば、貯蓄はせずに、急を要する時は会社に働き続けている限りは毎月入ってくる給与を前借りした方が合理的です。その方が自分の給与をより自分のために使う事ができます。
この事に気づいてからは、給与の前借りがあっても、あんまり渋らずに応じるようになりました。
―なるほど。固定観念を持たずに、フレキシブルに対応することがキーポイントな気がします。
―そんな伊藤さんがウガンダでビジネスをするうえで大切にしていることを教えてください。
「社会や時代の変化を予測しながら、持続可能な社会に向かうために必要な活動(商売)を考え実行すること」です。
私がアフリカで起業した理由の一つでもあるのですが、ここ数十年で社会は大きく変わりました。そして今後数十年でさらに大きく変わろうとしています。世界のあらゆる地域で、これまでの資本主義、大量消費社会から、より持続可能性の高い社会への変革を試みています。
その変化の中で、アフリカ大陸は数多くのグローバルな社会課題に直面しています。アフリカは、経済的にも弱小な国が多く、政府としても抵抗力がない。だからこそ逆に、イノベーションの潜在性があるのではないかと思っています。今後の地球の未来を担う大きなイノベーションの可能性をアフリカに感じ、起業しました。
日本のような先進国と比べて、成熟したものが少なく、新しい技術や考え方の入る余地が多い社会。その中で、社会の変化に流されるのではなく、社会の変化を先取りしながら、同時に自分の描くより良い社会に向かうための事業を模索しています。
これまでは住所のないウガンダでラストマイルに届ける宅配サービスを提供して来ました。昨年からは宅配をベースに新しい流通のカタチを提案できないか、と新規事業をスタートさせています。
中々思い通りに行かない事ばかりですが、試行錯誤を繰り返し、アフリカ発の持続可能な社会を創造するソリューションを生み出せたらなと思っています。
―本日は貴重なお時間ありがとうございました!
伊藤さんの言葉一つ一つがアフリカビジネスと向き合う姿勢を見直すきっかけになりました。伊藤さんはブログを執筆されているので、ぜひこちらをご覧ください。
CourieMateさんでは、現在人材募集もされています。
ご興味のある方はぜひ下記リンクよりご覧ください。